【国際協力対談】途上国の人々が先進国の課題を解決する時代がやってくるーーe-Education代表理事・三輪開人さん×田才諒哉

【国際協力対談】途上国の人々が先進国の課題を解決する時代がやってくるーーe-Education代表理事・三輪開人さん×田才諒哉

某人気長寿番組の有名人リレー対談企画を、国際協力の世界で再現!

今回は、国際協力サロンで行われている企画のひとつ「国際協力リレー対談」の様子をお届けします。記念すべき第1回目は、特例認定NPO法人e-Education代表理事の三輪開人さんをお招きしました。

田才諒哉(国際協力サロン代表。以下、田才):今日はよろしくお願いします!まず三輪さん自身について簡単に自己紹介をしていただけますでしょうか?

三輪開人(特例認定NPO法人e-Education代表理事。以下、三輪):特例認定NPO法人e-Education代表理事の三輪開人と申します。「”開く人”と書いて“開人(カイト)”と読みまして、開発を仕事にする人です」というのが前職であるJICA(国際協力機構)の最終面接で言った一言で、ひょっとしたら名前のおかげで内定もらえたかもしれません(笑)

今は途上国で教育支援をしているe-Educationの代表をしております。よく日本の”東進ハイスクール”、”ドラゴン桜モデル“ と言われておりまして、途上国の有名な先生の授業映像を、先生がいなかったり、足りなかったりする村の中高生に届け、その国のトップの大学への合格を目指していくという、途上国で教育支援をしている団体の代表を務めております。

途上国の若者の夢を応援したい。

田才:いきなりなんですけど、ZOZO前澤さんのTwitterでの100万円お年玉企画が当たったことをお聞きしました。

三輪:そうなんです。ご存知の方も多いと思うのですが、ZOZO前澤さんが100人に100万円を贈呈するお年玉企画があったんですけれども、それに当選させて頂きまして。ただ、偶然ラッキー!というわけでもなく、思いの丈を前澤さんに呟いたんです。1人1万円あれば、100通りの夢を応援できるんではないだろうかと考えまして、「途上国の若者の100通りの夢を応援したい」とご本人にメッセージを投げましたら、それがありがたく採用されました。

途上国の若者ってすごい可能性を秘めているなって活動を通して強く感じたんですよね。9年前の2010年に活動が始まり、当時高校生だった子に映像教育を提供したらバングラデシュで最難関と言われる大学に進学しました。現在までに累計250人程の生徒がトップレベルの大学に進学しておりまして、今ではもう当時の大学生が大学院生だったり、社会人になったりしています。

ちょうど2年前に彼らと再会したとき、「あんなことがしたい!こんなことがやりたいんだ!」って、キラキラした瞳で話してくれました。私たちは彼らがかわいそうだから支援をしているのではなく、彼らが本当に光る原石で、彼らがバングラデシュや世界を変えていくのを見ていきたい、応援したいと今の活動を続けています。ZOZO前澤さんの企画に応募したのもなんら変わらない、今の活動を続けていきたいなと思って応募した次第です。

田才:「途上国の若者の100通りの夢を応援したい」素敵ですね。その100万円の使い道はどのように考えているのでしょうか?

三輪:半分弱は活動を通じて出逢ってきたe-Educationの関係者でいきたいなと考えています。映像教育を受けた子たちが「新しい夢に挑戦したい」ということであれば、その夢を応援したいと思っています。そして前澤さんのように、いろんな人々を巻き込んで途上国の若者の夢を応援したいなと思っているので、これまで出会ったことのなかった人達とも一緒に、何か面白いことができたらなということで、もうすでに途上国の若者の夢を応援している人達や、これから応援したいという人達に1万円を“託す”というやり方で半分選べたらなと思っています。

“共通のイメージ“を伝えるために。

田才:その託された1万円がどのように途上国の人達の夢を叶えていくのか、楽しみですね。そういえばこのところ、三輪さんのプレゼンテーションの動画をYouTubeで観たことがあるという声を友人から聞くことがあり、三輪さんって最近「プレゼンの人」にもなってきていますよね。

三輪:国際協力、もしくは海外に関わる人って、海外で起こったことやこれから起こっていくであろうことを「伝える力」ってすごく大事だと思うんですよね。例えば、日本でいじめの問題や保育園に受からない状況が問題に上がったとき、我々はある程度同じイメージを持つことが可能だと思います。一方で、途上国の問題って共通のイメージを持つことって難しいと思うんですよね。だからこそ、国際協力に携わる身として、現地で見てきた生の声や活動の様子をどう伝えるのかということを磨いていくべきかなと思います。私の場合はプレゼンテーションやブログという方法で発信する力を鍛えてきましたね。

JICAで働いていたときに、3つの力が大切だと言われていました。現地の環境に寄り添える「現場力」、現場の課題を解決するための「構想力」、構想して実行したことを世に広く発信するための「発信力」。この3つが、私がJICA職員だった当時、緒方貞子さんがお話しされていたことでありまして、私はこれをド直球に受け止めて、社会人1年目もブログに力を入れてみたり、プレゼンの力を磨いてみたりしていたんですけれども、どうやら緒方さんのイメージする発信力というのはグローバルレポートであったりもっとアカデミックな内容だったようです(笑)それでもやはり、発信する力っていうのは大事かなって思ってます。

日本が発展してきた“歴史”を伝えていく。

田才:なるほど。その3つの力はどのセクターで働いていても必要な力だなと思います。三輪さんにとっての“国際協力”とはなんでしょうか?

三輪:日本が国際協力をする3つの理由って聞かれたことはあるでしょうか?目の前にいる、苦しんでいる人がいたら助けたくなるというのが人間の心情心理であり、そういう面での「人道支援」。日本と途上国は切っても切り離せない関係にあり、相互に助け合うという「相互支援」の考え方。例えば、今日本は半分以上の食料を海外からの輸入に頼っていて、その多くは途上国からという話はよく聞きますよね。

そして最後の1つ、「復興経験」の考え方です。日本は第二次大戦後、世界でもトップレベルの赤字になり、ODA(政府開発援助)を受ける形で成長進化してきた国です。例えば、関東から関西に行くときの東海道新幹線、東名高速道って、円借款と呼ばれる世界銀行からの融資で造られたものなんです。そのおかげで関東・関西間の移動が簡単になりましたし、経済が発展したのはいうまでもありません。

現在日本は途上国で新幹線や高速道路を造る活動を行っていますが、ただ日本が技術を持っているからというだけではなく、日本がそうやって発展してきた“歴史”も伝えていくのが国際協力だと思います。我々特に日本人、戦後赤字大国から世界2位の経済大国まで成長してきたこの過程そのものが、全世界の途上国が憧れる可能性のある形だと思うので、日本という途上国が先進国になるまでの過程を、共有といいますか、技術移転をしていくことが日本ならではの国際協力ではないかと思っています。

田才:本当にそう思います。日本だとあまり知られていないと思うんですが、今イギリスの大学院で勉強している中で、日本が開発の一番の成功事例として紹介されることもあります。20代とか若い人達って戦後日本がどれだけ貧しい生活を送ってきたかを知らない人も多いと思うんですけど、でも実際はそうだったということを、もう一度歴史から考え直すことでこれからの開発に活かせるものも多くあるんじゃないかと思っています。

三輪:そうですね。今JICAを離れて、NPOの代表になっても感じることなんですが、国際協力に関われて幸せなんです。なんだかこの仕事に誇りを持つことができるんですよね。最近本当に強く思うのが、国際協力の仕事ってこれからの日本、そして世界の未来を創っていく仕事だと思うんです。

例えば、今の活動を通してバングラデシュの高校生が大学生に、そして社会人になって、彼らが国の中枢となるのを見てきているんですよね。でももし、彼らが私たちと出会っていなかったら、彼らは高校を、大学を卒業できていなかったのかもしれない。別の未来があったかもしれない。そんな中で、我々の小さな行動でさえも、そこで築き上げたものが次の世界に繋がっていくのが見えてきているんですよね。私は「教育」という次のステップが見えやすい活動をしているからなのかもしれません。でも、保健衛生、インフラ、農業の支援をしている人も、未来の社会を創る仕事をしているんではないかと、強く思います。

途上国に行くと、気づいたら日本と親近感が湧くようなこともよくありまして、それって国際協力から派生してくることが多いんです。これから日本が勝つ負ける、かではなく、世界中の人たちと一緒に生きていく、暮らしていくために必要なことを、国際協力という手段を通して我々はできているのかなって思っています。

人と途上国をつなぎ、おもしろい化学反応を。

田才:三輪さんって本当に国際協力が好きですよね。僕も結構好きなんだろうなって思っているんですけど、国際協力サロンのメンバーも国際協力が好きなメンバーばかりなんですよね。それぞれがいろんな関わり方をしていて、国際協力って何なのか、これからどう関わっていこうかずっともがいている人たちも多いと思いますし、これからももがき続けるものなのかもしれません。

でもその中で、何で僕がここまで続けられているのか。それってきっと、“国際協力”っていう目に見えない、よくわからなものが好きなんだろうなって思いますね。三輪さんの中で、国際協力の何が好きでここまで続けられているのかっていうのはありますか?

三輪:NPO的な文脈でいうと、国際協力って結構同じことの繰り返しになることって多いんですよね。例えば、教育分野。我々、日本でいう予備校みたいなことをやっているんですが、言ってしまえば毎年のルーティンが発生するんです。毎年生徒が入学して、学校を開き、映像教育を届けた後に生徒たちは大学受験に挑んでいく。僕の中で9回くらい同じ景色を見てきました。

それでも国際協力に飽きない理由の1つは、関わっている人の変化を見れることなんですよね。それは現地の仲間たちもそうですし、e-Educationの職員やインターン生、そして支援者の方々にも変化が生まれてくるんです。同じ想いを持って一緒の夢を追いかけてく仲間が増えるのは面白いなって思いますね。

そして国際協力全体に関していうと、現地のだめなところを見つけるのってすごく簡単なんですけど、楽しいところとか素敵なところを探すのって最初は少し難しい。でも、慣れてくると楽しくなってくるんですよね。以前にe-Educationで“途上国のイメージを豊かにする”というコンセプトで「トジョウエンジン」というWebメディアを作っていまして、基本的に途上国のワクワクするところや綺麗な景色のみを紹介するっていうことだけをやりました。

これがなんと、3年間以上ほぼ毎日更新を続けられて、記事数的には3,000本くらい更新することができたんです。「あ、なんだ。途上国の素敵なところって意外にあるじゃん!」と思いました。国際協力サロンの皆さんもそうですけど、途上国が好きな人が集まって、みんなで素敵なところを出し合う度に、国際協力に面白い化学反応が起こって、長続きしていくのかなって思いますし、このサロンのメンバーの皆さんだからこそお伝えしたいことですね。

田才:たしかに、「世界の不条理が許せない」「原体験があった」「途上国で出会ったあの人とのエピソードが忘れられない」など、いろんな思いから国際協力サロンに入ってきている方もいらっしゃいますけど、このサロンは特に「国際協力が好き」っていう入り口から入ってきてくれている方が多い印象はあります。

三輪:それは良いコミュニティですね!

これからの国際協力はそんなに変化はないかもしれない。

田才:次のトピックは「これからの国際協力」について。日本の開発が良い事例だと言われてはいるものの、実際は環境問題だとか長時間労働だとか、いろんなものが犠牲にされてきた上での経済発展だったんですよね。今までが悪かったとかではなくて、どういう部分を改善して、どう次の開発のフェーズに持っていくかという部分での、新しい国際協力の在り方、これからの国際開発についてお話しできればと思います。

三輪:これからの国際協力、面白いですね。実は2つ思っていることがあります。これから起こる面白い国際協力と、とは言え現実的なもの。

まず大前提として、これからの国際協力ってそんなに変化のないものだと実は思っています。よくこれからの国際協力って新しいテクノロジーや手法が大きな変化を起こしていくという話もあるのですが、これらって過去の先人たちも何万回と議論してきたことだと思うんです。でも国際協力の世界を見てみると、以前とさほど変わっていないんですよね。稲作はいまだに教えていますし。

それが何故なのか考えたときに、いくらテクノロジーが発展していようが、我々が人間であること自体に変わりがないからではないかなと思います。例えば、「明日は早起きしよう!」って言われて、みんなすぐできるものではないですよね。物事を習慣化することは、心理的なハードルも高ければ、なかなか踏み出せないこともある。それってすごく“人間らしい”ことだなって思います。

我々は先進国で、そういうものの乗り越え方を学んできたにも関わらず、それがなかなか実現できないということは、そういう機会に恵まれない、できないことはできないままでいいと思っていた途上国の人たちが、日常の当たり前を変えていくまでの時間って、きっとテクノロジーの進んでいるスピードや新しい国際協力を開発するよりもずっと遅いんじゃないかなっていうのが、私が感じている最近のことですね。

田才:どこまでいっても人間が国際協力に携わる限り、たしかにその通りな気がします。

三輪:言葉を選ばずに言えば、最近ちょっと焦りすぎているような気もしています。途上国の人たちには途上国の人たちなりの生活があり、暮らしのリズムがあるからこそ、その中で小さな変化を起こし続けるのが、我々国際協力に関わる人、これから関わっていく人の中で大事な視点じゃないかなと思います。“人間らしい国際協力”って言葉をよく私は使うんですけど、一所懸命頑張ってスピード感重視でやっていく人もいれば、そうではなくて、もう少しのんびり社会を変えていきたいなって人も、全部ひっくるめて関わることができるし、我々が支援する途上国の人たちと一緒に創っていく世界なのかなと思ったりします。

ただその上で大きく2つの面白い波がやってくるだろうなと思っています。1つ目は、日本ではできなかった新しい国際協力、社会課題を解決していく手法が海外から生まれてくるということです。例えば、僕らの活動でも、RCT(ランダム化比較実験)という手法を用いてDVDの学習効果を測定した時期がありました。映像授業を受けている人と受けていない人でどれだけの学力差が生まれるのか。これって開発の業界では極めて当たり前。全ての基本的な条件を揃えた上で、ある一部のところだけを変えて実験をするということを3年間近くやっていたんですけれども、これを日本でやろうとしたら絶対無理だったんです。

なぜかと言うと、DVDを受けられる人と、受けられない人でデータをとらしてくださいなんて言っても、学校や保護者は反対しますよね。でもこれが途上国で、ある程度リソースが限られているところだからこそ、言葉を選ばずに言えば社会実験のようなものが可能で、これからももっと行われていくと思います。と言いますか、実は前からずっと行われているんですけど、それがもっと顕著になりつつあると思います。

南南協力ならぬ、南北協力?

三輪:それからもう1つ、途上国の人々が先進国の課題を解決する時代が確実にやってくると信じています。

例えば、日本の高齢化という問題に対する一番の解決策は、人口が余っている国から協力を得ることというような話はこれからの日本で確実に議論されることであると思います。他にも、英語も含めて、途上国の人達の方が優秀であることって、容易に想像できるんじゃないないでしょうか。途上国の人たちが、日本の課題を解決しにくる、もしくは途上国のNGOが日本の企業と連携するような事例というのは、これからもっともっと出てくるような気がしています。

田才:今までとは逆方向の国際協力の形は僕も出てくると思っています。これからどんな風に国際協力の潮流が変わっていくのか、一人の国際協力が好きな人間としてとても楽しみです。三輪さん、今日は本当にありがとうございました!

三輪:面白い、ワクワクするような国際協力を一緒に創っていけたらと思います!素敵な時間をありがとうございました!

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HP: http://eedu.jp/about/outline/

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